6号までのfrom Fraction MagではこれまでU.S.A版に掲載された写真家のなかから比較的日本の読者にもわかりやすいと思われる写真家を選んで掲載してきました。
写真はその写真を撮影した写真家の文化的・民族的な背景を色濃く反映しています。Fraction Magazine U.S.A.版を見てみると僕たち日本人にとって写真を見ただけではほとんど理解不能なポートフォリオもなかにはあると思います。写真家のステートメントを読んで、その写真家の経験してきた人生、風土などに感情移入してみてだんだんとそのポートフォリオの意図するところがわかってくることもあると思います。
この世界にはさまざまな人達が住んでいて、さまざまな価値観、食べ物、家族、友人達、その社会の規範などに縛られて生きています。グローバリゼーションという言葉が飛びかい、インターネットがいくら発達しても、人はその土地にいやおうなしにしばりつけられ、その土地にねざした考え方の枠組みから逃れることはむずかしいのです。
けれどもまったく異国の土地の人々の写真を理解しようと試みることから、多様な文化の織りなす世界に足を踏み入れることから、自身のよってたつ文化をより深く理解できる可能性もひらけてきます。

そんなことを考えながら今回のfrom Fraction Magでは、Issue42を丸ごと紹介してみました。

以下に引用するのは中公クラシックスのレヴィ・ストロースの著書『悲しき熱帯』のしおりにある言葉です。
人類の創り上げてきた多様な諸文化が織り成す虹こそ、わたしたちを接近不可能なものへと結び合わせているか細い掛け橋である。人類はそれを渡ることはできなくても熟視することで恩寵が得られる。だが、そのためには、人間を駆り立てている進歩への衝動、すなわち必要という穴を塞いで自分を閉じ込めていくような歩みを止めなくてはならない。」