ポートフォリオレビューとは

もともとは「アルル写真の出会い」でフランス王立図書館館長がフォトフェスティバル期間中にホテルのロビーで写真家達のポートフォリオを見てあげていた、そして気に入った作品があればその場で買い上げて図書館に収蔵していた、というのがそもそもの始まりといわれています。
それをシステム化していったのがヒューストンフォトフェストのミーティングプレースです。現在では世界各地のフォトフェスティバルでポートフォリオレビューが開かれるようになりました。著名なポートフォリオレビューはヒューストンフォトフェストのミーティングプレース、センター主催のレビューサンタフェ、ポートランドのフォトルシーダ、アルルのフォトフォリオレビューなどがあります。

現在、世界的に標準化されつつあるポートフォリオレビューのシステムは、写真家が選んだレビュアーに対して20分間対面して自分の作品を見てもらうことができるというかたちです。レビュアーは写真業界のエキスパートと呼ばれるコマーシャルギャラリーのギャラリスト、美術館のキューレーター、出版社の編集者、レップ、コンサルタントなどです。欧米ではギャラリーに写真家が個人的にアプローチして売り込みをする道はほぼ閉ざされていますので、ポートフォリオレビューの重要性が高まってきています。参加費もミーティングプレースの場合820ドルと高額ですが、ポートフォリオレビューをきっかけに世に出る写真家も多いので見返りは大きいといえるでしょう。ミーティングプレースはポートフォリオレビューの中では最大級のもので参加写真家も500名ほど、レビュアーは世界各国から200名ほどが集まります。事前審査のあるポートフォリオレビューもふえる傾向にあり、レビューサンタフェでは約600人の応募者の中から100人の写真家が選ばれて参加します。
参加する写真家も多種多様です。広告写真などのキャリアがあり、さらにファインアートフォトの市場にデビューしようとする人もいれば、本業はファイナンシャルプランナーだとか獣医さんなどでパートタイムフォトグラファーの人、つい最近写真のワークショップに参加したという新人まで世界のポートフォリオレビューに参加する写真家は実にさまざまです。年齢層はどちらかというと高い傾向があるようです。
また人気作家になっても市場をひろげるために何回も参加する写真家もいます。

ポートフォリオレビューが活性化しているのは写真がコンテンポラリーアートとしての位置を確立しつつあること、アートマーケットが絶えず変化していることでギャラリストなどが新しい才能を発見する合理的な方法であること、写真関係者が一堂に集まるので業界の情報交換にも役立っていることなどがあげられるでしょう。アートフォトの大衆化もアートフォトインダストリーが新しい才能を組織的に探そうとすることに拍車をかけているかもしれません。
それゆえに多忙なギャラリストやキュレーターも報酬なし、交通費、宿泊費、食事代支給のみで集まってきます。
ただ大規模なポートフォリオレビューは費用も莫大にかかるので、行政や企業の支援がなければ成り立ちません。
日本でこれまでに大規模な国際的ポートフォリオレビューが開かれていないのは、資金的な面と言葉の障壁が大きいといえるでしょう。
またアマチュア市場が中心だった日本の特殊事情からポートフォリオレビューという言葉が有名写真家や評論家などに写真を講評・アドバイスしてもらう場という言葉になりつつあるのも残念なことです。
欧米のポートフォリオレビューはあくまで写真家がアートフォトインダストリーのエキスパートたちに自分の才能を売り込む場です。レビュアーであるギャラリストが自分に興味のない写真家のポートフォリオを見せられたときははっきりと自分はこういう写真には興味がない、と言われて話は終わってしまいます。親切なレビュアーであれば、あなたの作品はこのギャラリストに見せた方がいいのではないか、というようなアドバイスはしてくれる場合もあります。
またビジネス・オブ・フォトグラフィーという立場から専門のコンサルタントもいて、こういう人達は写真家のポートフォリオやウェブをみて、名刺の作り方からどんなファンドがあるか、までさまざまなアドバイスをしてくれます。