カリグラフィー S・ゲイル・スティーブンス
Calligraphy by S.Gayle Stevens
繊維
歩く
しっぽ
軌道
イカロス
吹く
変化
静けさ
豊穣の角
命
地図
通過
龍
突く
ダンス
話す
入り江
猫と鼠
レース
潜る
ハルピュイア
カリグラフィー(書道):美しい筆跡、ドローイング
フォトグラフィー:光のドローイング
タクソノミー(分類法):生き物の分類についての科学
〈カリグラフィー〉は、私が自宅付近の散歩や旅行で集めた植物や動物の標本を被写体にした、コロジオン湿板によるフォトグラムのシリーズです。17世紀、博物館の原型ともいえる自然史のコレクション、“キャビネット・オブ・キュリオシティ”からインスピレーションを得ました。「キャビネット」とは小さな部屋のことで、そこにさまざまな植物や動物の保存標本や鉱物のコレクションが陳列されていたのです。私のコレクションは多様な動植物の残骸や死体、骨などから成っています。私はずっと、私たちが日々の生活のなかで見過ごしているものに興味をそそられてきました。わずかな残存物にこそ宿る独特の美しさを大切にしたいのです。
私はこれらの標本のドローイングをコロジオン湿板の上に描き出しました。フォトグラムのシルエットは暗い影のようであり、わずかな線で構成されながら豊かな表現力をもつ中国の書道の筆跡を彷彿とさせます。かつての標本がそうであったように、銀を多く含む湿板は変化しやすく、定着処理をしていないため、年月とともに変色します。変色の度合いや速度は環境によって左右されますが、やがてアンティーク・シルバーのような風合いに変化していきます。
〈カリグラフィー〉シリーズは、19世紀の標本と同様の5インチ(約13センチ)四方のプレート(1枚または数枚)を、黒い木のシャドーボックスフレームに収めたものです。このコレクションは、私の毎日の散歩で集めた標本を陳列した私的博物館としてディスプレイされます。これらの写真は私にとっての「メメント・モリ(死を想え)」といえるもの――過ぎ去った生命の証であり、束の間浮かんで消えていった影を表現したものです。
(翻訳:幾島幸子)
S・ゲイル・スティーブンス
イリノイ州ダウナーズ・グローブ在住の写真家。
S・ゲイル・スティーブンスウェブサイト S.Gayle Stevens website