うつろい 志鎌猛
Evanescence by Takeshi Shikama
森は動かない。じっと静止してそこにある。
長い間、そう思っていた。
けれども、森の襞に分け入るうちに、
静かな、密かな動きの積み重なりが、
実は森なのだと気づかされる。
数知れない生命が営々と営まれ、うつろいゆく大自然の輪廻。
何かそういうものを感じて、私は森に惹かれているのだと思う。
そして今、気になりだしているのは、あらゆる生命の一瞬。
足許で朽ちようとしている草花や、流れていく水や、木の影や、
大きな時間の流れを森と共有するひとつひとつをしっかり見たくて、
自然のゆるやかな動きの中に身をまかせ、
レンズの眼を開かせてもらえる瞬間を待っている。
プラチナ・パラジウムプリント
手漉き雁皮紙による
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