窪山洋子 選 (ギャラリスト・ブルームギャラリー

窪山洋子 ステートメント

近世店屋考  池本喜巳

Kinsei miseya-kou by Yoshimi Ikemoto

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笹間理容店 1983 鳥取県西伯郡大山町佐摩


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笹間理容店 1983 鳥取県西伯郡大山町佐摩


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笹間理容店 1983 鳥取県西伯郡大山町佐摩


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山根理容店 1987 兵庫県佐用郡佐用町平福


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山根理容店 1987 兵庫県佐用郡佐用町平福


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山根理容店 1987 兵庫県佐用郡佐用町平福


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山根理容店 1987 兵庫県佐用郡佐用町平福


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山根理容店 1987 兵庫県佐用郡佐用町平福


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河田理容室 1983 鳥取県鳥取市青谷町


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河田理容室 1983 鳥取県鳥取市青谷町


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河田理容室 1983 鳥取県鳥取市青谷町


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河田理容室 1983 鳥取県鳥取市青谷町


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河田理容室 1983 鳥取県鳥取市青谷町


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河田理容室 1983 鳥取県鳥取市青谷町


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河田理容室 1983 鳥取県鳥取市青谷町


床屋から撮影が始まった。1983年頃、鳥取市青谷町は赤瓦の古い町並みが残っていた。カメラを肩に散策をしていると、表のガラス戸を開け放った床屋があった。河田理容室といった。入口には壊れたロボットのようなストーブがデンと居座っていて、右奥の一段高い畳の問にはなぜか4台のテレビが積んであり、ハサミやカミソリの棚にはご主人とそっくりな老猫が眠っていた。こんな店がまだあったのだ。タイムカプセルのような世界に一歩足を踏み込み、「撮影させてください」と何度も頭を下げながら、すでにシャッターは切っていた。使い込まれた道具、飲みさしの一升瓶、真新しいカレンダー。主人のにおいのしみ込んだアンバランスな店内は不思議がいっぱい。ワクワクしてお客さんが来るのもかまわず、日暮れまで撮り続けた。それからはやたらと床屋が気になって県内を走り回った。やがて床屋以外の古い商店へと興味は広がり、肉眼では見落としてしまう小さな部分までも克明に記録したいと、190×240mmのフィルムを使用する木製の大型カメラまで特注し、愛車に積み込み、街から街へ走りながら撮っていった。「この町に昔ながらのお店はありませんか。」「この前まであそこのクスリ屋さんがやっとんさったけど、今はしめとられる。」撮影の間にも消えゆく商店があり時間との競争でもあった。山陰の山ひだにひっそりと存在するこれらの商店は、やがて消えてゆくだろう。


池本喜巳は鳥取生まれ。鳥取在住の写真家。

池本喜巳ウェブサイト