後藤繁雄 選 (ディレクター G/Pギャラリー)
untouched flower 藤本涼
untouched flower by Ryo Fujimoto
untouched flower #1
untouched flower #2
untouched flower #3
untouched flower #4
untouched flower #5
untouched flower #6
untouched flower #11
untouched flower #12
untouched flower #7
untouched flower #8
untouched flower #9
untouched flower #10
どこかへ旅行に行く際には、インターネットの検索エンジンで事前に行く場所 を画像で確認してしまうことが多い。もちろん、そこで得られるイメージを良 い方向に裏切られることを期待して出かけて行くのだが、大方はやはり「旅行 前のイメージの確認作業」に終始してしまうし、ひどい場合には現地に行くこ とで旅行前のイメージが傷つけられることすらある。 それならば、『さかしま』の主人公デ・ゼッサント公爵の様に、狭い部屋の中で閉じこもり、航海の後に上陸して地に足を着けることもなく、ひたすら舷窓(/ 幻想、どちらも『げんそう』と読むことは興味深い)のガラスの前を去来する、 機械仕掛けの精巧な魚を眺めていた方が賢明かもしれない(とは言え、旅行することはとめられないのだが)。
かの地に咲いていた花をインターネットで「具体的には目に触れることも無く」 無作為に購入し、届けられた花の花冠部分のみをモニターの中で再び咲かせ、 その花に自宅近くの川で無作為に拾った、「触れて良いかどうかを見極めようとする際に用いられる道具としての」木の枝を接続する(/しようと試みる)。私の自宅にある24インチのPCモニターを、ある種の「私たちが触れることのできない」彼岸や、サンクチュアリとしての想像行為を映し出す装置と捉え、そこに「こちら側ではなくすべてあちら側を向いて」映るからこその、不在性のようなものや記憶の残滓のようなものを、切り取られた花冠を媒介物として可視化することへの試みとして、今作品を提示する。
藤本涼は東京の写真家。
藤本涼 ウェブサイト