切手収集 區家耀
Collect Stamps by Gavin Au
写真撮影術が発明されて以来、写真には覗きという欲望がつきまとってきた。敵の基地に潜入し情報収集する特殊部隊から、有名人のプライバシーを侵害するパパラッチにいたるまで覗きという行為は人間の社会に定着している。
人間に好奇心と欲望があるかぎり覗きはなくならないし、どんどん進化していくものなのだ。毎日インターネットで他人の生活を「覗き見している」人がたくさんいて、我々は知らず知らずのうちに「覗きの世代」になっていく。どんなに道徳をわきまえていても、どんなに倫理観が強くても、どんなに学歴が高くても、人は「覗き」の誘惑に負けてしまう。覗きに合法性はないにもかかわらず、また 道徳上の良し悪しにもかかわらず 現代写真の機能として覗きは重要な写真文化の構成要素である。
『アップスカート』という前のシリーズでは、対立している「美しさ」と「汚なさ」の間にある倫理的なパラドックスを無垢な人形で表現した。アルフレッド·ヒッチコックの『裏窓』でも合法と違法の間にゆれうごく快感が語られているが、覗きという行為に一般性はなくとも人間の社会的な行為なのである。
真実や誠実といった問題が常に隠されているこの世界では誰も覗きを無視することはできないだろう。
『アップスカート』というシリーズが表現したのは他人に対する好奇心と独占欲である。それに対して、今回『切手収集』というシリーズで強調したのは人間の貪欲さである。それは切手収集家のように、切手を一枚ずつ収集していくと最後にはすべての切手を自分のアルバムに収めるまで満足できなくなるということと似ている。
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