Noise 太田菜穂子選 (『東京画』コミッショナー )
Vanishing Existence 岡原功祐
Vanishing Existence by Kosuke Okahara
川を越えたところにその村はあった。「あんな恐ろしいところに良くいくねぇ」川のこちら側に住む女性が言った。しかし、そう言った女性の言葉とは裏腹に、一見すると老人ホームなのではないかと錯覚させる雰囲気がこの小さな村には漂っていた。平均年齢70歳前後の村人たちは、彼らが耐え抜いてきたはずの辛い過去などないかのように穏やかに暮らしていた。「ハンセン病」世界的に差別を受けてきたこの病気の回復者たちは、今も残る差別ゆえ故郷に帰ることもできずにいる。中国南部に600以上あると言われる隔離村。年老いた回復者たちの多くは今もその存在を認められないまま、発展を続ける中国経済の影で、淡々と時を過ごしている。
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