借景 マルティナ・シェナル
Borrowed Views by Martina Shenal
本シリーズは、日本の南部の瀬戸内海周辺にある、意味の無い、時には広い空間を撮り歩いたものです。私は、公的なものと私的なものの交わり、自然に対しての人工的環境、明示的なものと比喩的なものの境界線がもたらす保護と孤立に興味を持ちました。場所は経験的に知っていることを暗示し、空間は未知のものを示しますが、これらの写真は 外国人の観察という距離的な背景に対する私的な遭遇の両極的なものを提示しています。ある意味、場所の説明というよりは、見る行為となります。詳細な場所の説明をもとに、写真は物質世界の永遠に過ぎ去る瞬間の不明瞭な断片の中で創られています。
このタイトルは、漠然と借景という言葉をベースにしています。これは、遠近法のひとつで、古くから東洋にある風景画の手法であり、17世紀の日本庭園様式に使われています。前者では、風景を重ねることで空間的距離の概念を作り出し、後者は知覚の壮大な風景を庭園に閉じ込めるため、入念に焦点を造り出しています。自然に対し意識的に手を加えることで、これらの写真は現実と想像の敷居と境界の両方を思い浮かばせます。そして写真の中にあるものが現実の仲介的創作物であることを感じさせるでしょう。
マルティナ・シェナルはツーソン出身アリゾナ在住の写真家です。
アリゾナ大学写真学部の準教授。
(翻訳:山田晃弘)