ホーム・スチール バスティエンヌ・シュミット
Home Stills by Bastienne Schmidt
家、それはしばしば家庭がもたらす至福と自己観察の完璧な舞台となる。バスティエンヌ・シュミットは「主婦」の役割を演じる自分自身を撮影したコンセプチュアル・シリーズ「Home Stills」で、この家庭というユートピアに挑む。
シュミットはこの作品で、ヴァージニア・ウルフの『私だけの部屋』に視覚的な解釈を与えてみせた。ニューヨーク州ロングアイランド、ハイウェイ27号線沿いのパッチョーグからイーストハンプトンまでの、安いモーテルの部屋から高級住宅地ハンプトンの大邸宅にいたるさまざまな室内を想像上の「私だけの部屋」に作り直し、撮影の舞台とした。瞑想的な静けさはフェルメールの絵画に描かれた室内やエドワード・ホッパーのメランコリーと空っぽの空間を思い起こさせる。この作品に登場する女性の頭には、どこかへ逃げ出したいという思いが去来し、時に皮肉な幻想が広がる。この想像上の物語の最後にはいつも近くに車がいる――飛び乗ってどこかへ走り去ることができるように。
バスティエンヌ・シュミットはドイツ生まれ、ニューヨーク在住の写真家。これまで20年にわたり、国内外で作品を発表してきた。マルチメディア・アーティストとして活動。イタリアで教育を受け、成長期をギリシャとドイツで過ごす。ニューヨーク近代美術館、同国際写真センター、ロンドンのヴィクトリア&アルバート美術館、ワシントンDCのコーコラン美術館など多くの美術館に作品が収蔵されている。これまでにVivir la Muerte, American Dreams, Shadowhome, Home Stills そして最新刊Topography of Quietの5冊の写真集を出版。
シュミットの最初のプロジェクトVivir la Muerteはニューヨークの国際写真センターで単独展示会として発表され、ドイツのコダック賞を受賞。アメリカ人が死とどう向き合うかを記録するためにジョージ・ソロスの助成金を受ける。Shadowhomeはドイツで最優秀写真集賞を受賞、2005年にハンブルク美術工芸博物館で単独展示会が行われた。Home Stillsは2010年にフロリダ州デイトナビーチのサウスイースト写真美術館、2012年にヒューストン写真センターとロシア、サンクトペテルブルクのマネージ美術館で展示会が行われた。
バスティエンヌ・シュミットはニューヨーク市およびニューヨーク州ブリッジハンプトン在住の写真家。
(翻訳:幾島幸子)
バスティエンヌ・シュミット ウェブサイト
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