写真による行為・新しい視点を求めて

釣り人が竿や網を使って魚を捕る。
これに私の撮影行為は似ているかもしれない。
風景の中に自分が入り込み、
罠を仕掛けるように撮影装置を駆使して写真を撮る。
また道具・装置を変える事で、捉え方や見え方も変化する。
自然の中で釣り糸を垂らせば、水面に波紋ができ、微かな変化が生じる。
この微かな反応こそが、見慣れた日常に
新しい視点を見出してくれるのではないか、
非日常空間へと導いてくれるような、そんな気がするのである。

SHIELD / 2013
シャッターを解放した状態に保ち、自らフレームの中に入って
コンパスに似た装置を使い、私は光のシールドをゆっくり描いていく。
撮影は自分が大判カメラの中に入っていくような感覚がある。
見慣れた風景。非日常空間への転化。

Falling Light / 2011
水面にスポイトで水を垂らすように、数千のストロボ発光を
長時間露光で８×10 フィルムに刻む。揺らぐ水面に光の輪は形を失い、
光の粒は拡散しながら水底を侵食して画面全体を覆っていく。
制御する具象から、制御不能な抽象へ。

中断された場所 / 1998
フォーカスする対象は、あるがままの日常の風景、
あるいは、目を向けるほどの光景でもない何気ないモノたちである。
繋ぎ合わせたコンクリートの壁で風景の一部を覆い、隔離すること。
それはドキュメンタリーを架空の日常空間に再構築する作業である。

小林秀雄は東京在住の写真家。

小林秀雄　ウェブサイト