“Imperfect Moment” 侘び・ポジティブな瞬間 福川芳郎選 (Blitz Gallery)
ギャラリストステートメント
PEACE LAND 蓮井幹生
PEACE LAND by Mikio Hasui
リンフォフ617のファインダーを通して見る風景にはその実在とはまた違ったまるで虚像の様な独特の印象を受ける。
それはなぜなのか。ファインダーのレンズによる歪みなのだろうか、またはその曖昧に揺れ動くフレームのせいなのだろうか。
いやそのような物理的なことではない。
私はこの何とも曖昧なファインダーを通った風景を見るのが好きだ。それは現実の光より象徴的で詩的でなおリアルである。
私の眼底に投影されたその映像には、そこに聞こえるべきあらゆる音が不思議と消え去り、一切の音も無い。
おそらくはその間わずか数分から数十分なのだが、筆舌には尽くせない無垢な幸福感に浸ることとなる。そしてフィルムの乳剤に一枚の映像を焼き付ける。
私にとってこのシリーズPEACE LANDの撮影とは些かの誇張も無くその様なことである。
6対17の縦横比で切り取られた光の風景は、まるで実在のそれではない様な錯覚に陥ることすらある。
ファインダーの中に見るその不安定な実在はフィルムの上で確かなそれへと一瞬にして変化する。私はその瞬間において幸福感とも言える感覚に毎回出会う。
それは、言い換えれば今ここにいることへの感謝とその光に対する畏敬の念である。そして私自身の命とすべての命に対する敬意である。
私という確かな実在はどこから来たのか知るすべは無い。しかし唯一この魂はその中に宿りいまもその行く先を探り続けている。
私の魂は一切の音を出すことなく、また姿を見せること無く、写真という実在の中でしっかりと生きている。
この世界に生きるすべての命は同じようにすべての魂のもとに存在している。
そのことに気づく正しく一瞬の繰り返しに、私はこの世界を知ることになる。そしてそれが愛だということを。
すべての命がその尊厳をもってこの美しい光のもとに平等にあることを切に願う。
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