ホワイトサンズ 清水裕貴

whitesands by Yuki Shimizu

眠れない時は心臓の音を百数えろと先生は言った
手首を耳に押し付けて横たわると
血流の、はげしく流れる川のような音の向こう側から
規則正しい鼓動が響いて
それを数えていると大抵、百までいかないうちに眠りに落ちた
もし百数えても眠れなかった時はどうすればいいのかと聞くと
先生は
百一回目を数えているのは夢の中のあなただ、と言った


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私は写真で物語を作る。
写真は光景から言葉を剥ぎ取り、意味の無い細部のかたまりにする。
その細部は干渉し合い、記憶や感覚にうったえかけ、新しく文脈を構築し物語になる。
「ホワイトサンズ」は旅する魂の物語。
ニューメキシコ州の白い砂漠を旅して撮影した写真と、日本の身近な写真を織り交ぜて構成した。

制作の発端は、鳥類博物館で出会った行き倒れの鳥。その鳥は台風によって遠い国から連れ去られて、近くの路地で死んでいたものらしい。鳥の死んだ路地に行くと、洗車の泡が道路に流れて純白になっていた。それを見て、私は白い砂漠へ行こうと思った。
砂漠の町は標高が高く、昼は太陽が眩しくて暑いくらいなのに夜は凍えた。
眠る時、脚が冷えて痛かった。そのせいか、脚が動かなくなる女の子と、彼女の杖になってしまう男の子の夢を見た。五感とイメージの錯誤。夢と現実の関係は写真に似ている。私はその夢に関する物語を作る事にした。

清水裕貴 ウェブサイト