ボーダーライン ケリー・マンスフィールド

Borderline by Kerry Mansfield

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現在私が「ボーダーライン」イメージと呼んでいるものに最初に出会ったとき、それを撮影したネガに、目で見たときと同じものが映るかどうか確信がありませんでした。カメラが出した答えは「イエス!」でした。私の心配を吹き飛ばすように、コンタクトシートにこれまで見たことのない新しい世界が現れたのです。以来、私は自分が選んだ家の窓ガラスの反射を利用して、室内と外の空間を組み合わせたイメージを1枚のパネルに焼き付けてきました。撮影し現像するのは1枚のネガだけで、二重露光やその他のデジタル操作はまったく行っていません。また、こうしたイメージを作り出すために恣意的に状況を設定したり調整することもありません。ただひたすらこれだという瞬間を追い求め、それをとらえるだけです。

この探求を通じて私が気づいたのは、人間と自然のあいだにはしばしば調和的な融合が存在するということです。ガラスに映り、反射し、重ね合わされたもの同士は、置き換え可能になります。空が天井になり、木々が壁になる。地面が床になり、空気が窓になるのです。できあがった写真のなかでは、窓自体が完全に消えて外のものが中へと流れ込み、またその逆のことが起きます。建物などの構造物を造ってしまえば、私たち人間は自然界から切り離され、その「混沌とした」影響を受けない「安全な」ところに身を置けると考えます。けれどもこれらの作品を撮影するなかで気づいたのは、私たちが自然と切り離されたと考えるのは、多くの点で幻想にすぎないということです。そして私たち人間は、その幻想を自分たちのリアリティとして生きているのだ、と。

家の中の壁や天井、家具を形づくる硬いラインと、家の外の世界を包み込む植物学的デザインのあいだには、継ぎ目のない融合が生じ、第三のリアリティが生まれる場所があります。写真のなかの壁が実態をもつものなのか、それとも窓ガラスに映った像のなかに浮遊するそれ自身の幻影にすぎないのかは、もはや見分けがつきません。こうして現実のイメージとガラスに映り込んだイメージが結合したとき、それは自分自身の定義を明確にし、互いに切り離されたものであろうとはしません。同時に、両者が溶け合ってひとつになろうともしません。ただ両者を隔てる微妙な違いを探ろうとするだけ――ただ境界線(ボーダーライン)上にゆるぎなく存在するだけなのです。

(翻訳:幾島幸子)

ケリー・マンスフィールド
カリフォルニア州サンフランシスコ在住の写真家。
ケリー・マンスフィールド ウェブサイト