ヘザー・ディナス
Heather Dinas
アイコン-ルクレティア
アイコン-ジョアンナ
アイコン-剣を持つジョアンナ
アイコン-ザクロを持つイヴ
アイコン-短剣を持つルクレティア
アイコン-セルフポートレイト
アイコン-上昇
アイコン-メルクリウス
ベアトリーチェ-亡霊
ベアトリーチェ-インテリア・東
ベアトリーチェ-ピエタ
ベアトリーチェ-インテリア
ベアトリーチェ-エクソダス
アイコン-アダム
カッシアーニの讃歌1
カッシアーニの讃歌2
カッシアーニの讃歌3
ギリシャ系の両親をもち、オーストラリアで生まれ育ったことが、私のなかにユニークな異文化的視点をもたらしてくれました。子どもの頃から、私はビザンチンのイコノグラフィーに魅せられていました。イコンが生まれた時代、人口の大半は字が読めませんでした。そこに描かれた人物の眼差しや手の仕草、その人物と背景のディテールや小道具との組み合わせといった一見シンプルな手段によって、多くの情報や物語が伝えられたのです。そうしたものは、見る者に畏敬の念をかき立てたり、微かな誘惑をよび起こしたりもしました。前半の作品のタイトルを「イコン」としたのは、それが瞑想を連想させること、そしてこの語が「象徴」を意味するように、仕草のシンボリズムを通して私たちに語りかけてくるからです。
より全体的で高度な自己の希求には、官能性と精神性という両面性がつきまとい、それは女性のアイデンティティにもかかわる問題でもあります。私はこれまでたびたび、この両面性からインスピレーションを得てきました。ここに紹介する作品のほとんどは、私自身の美術学修士過程の頂点をなす個展「処女と誘惑する女」のために制作したものです。
「アイコン」シリーズでは女性の原型へのより現代的な探究を描き、「ベアトリーチェ」シリーズではダンテが描いた「永遠の淑女」ベアトリーチェを、精神的欲望と肉体的欲望の間にある多くの類似点のメタファーとして用いています。私の作品で重要な触媒となってきたのは、この二面性にほかなりません。
最後の三点は新しいシリーズ「カッシアーニの讃歌」から選んだものです。これらの作品はギリシャの興味深い歴史上の人物からインスピレーションを受けたもので、その物語を媒介にしてさらに性的アイデンティティというテーマを探っていけたらと考えています。
ヘザー・ディナス
オーストラリア、メルボルン在住の写真家。
(翻訳:幾島幸子)