歴史の影 デヴィッド・メイセル

History’s Shadow by David Maisel

01_Maisel_Historys_Shadow_GM12.jpg


02_Maisel_Historys_Shadow_GM3.jpg


03_Maisel_Historys_Shadow_GM4.jpg


04_Maisel_Historys_Shadow_GM16.jpg


05_Maisel_Historys_Shadow_GM21_and_GM22.jpg


06_Maisel_Historys_Shadow_AB16.jpg


07_Maisel_Historys_Shadow_AB1.jpg


08_Maisel_Historys_Shadow_AB8_a_and_b.jpg


09_Maisel_Historys_Shadow_AB15.jpg


10_Maisel_Historys_Shadow_AB2.jpg


11_Maisel_Historys_Shadow_AV4.jpg


12_Maisel_Historys_Shadow_AV3.jpg


13_Maisel_Historys_Shadow_AV5.jpg


14_Maisel_Historys_Shadow_GM15.jpg


15_Maisel_Historys_Shadow_GM17.jpg


16_Maisel_Historys_Shadow_GM20.jpg


歴史の影は、古代美術作品のX線写真を再撮影したシリーズです。博物館の保管庫から保存を目的としたX線写真を選定しました。X線写真を通して、元の美術品が非コンテクスト化されながらも、実際には生き生きとし、再発見されています。

ビジュアルアーティストとして、この作品では、記憶と発掘という二重の過程を意識し、歴史の影というタイトルで、これらのつながりあったテーマの継続と拡張を示しています。2007年にGettyリサーチ研究所でレジデントアーティストとして過ごした際、芸術の領域と科学的リサーチが互いに重なり合う、美術品の保存過程で作り出される画像という考えを探求し始めました。Gettyミュージアムの保存課で撮影をしていると、私は常設の美術作品のX線写真に魅了されていきました。X線の霊的な画像は美術品自身が持つ力を凌駕しているように思えます。これらの霊的な描写は、遠い昔から送られてきた、時空を超えたメッセージのようでもあります。さらに最近では、サンフランシスコのアジアンアートミュージアムで保存されるブッダや器、サークルのX写真で作品作りをしています。

X線写真は古代の遺物より発せられる神秘的なテーマを探る道具となります。物体が占める影の世界は、画像を取り囲む黒い空間により表されます。あるものは巨大な冥土の世界となり、またあるものは、脳のスキャンやポートレートのような滑らかな下絵のようになります。歴史の影というタイトルは、文字通り再撮影されたX線写真が創り出す画像と、それらの物体自身から派生する過去に形成された隠喩的な表現を意味します。

撮影したすべてのX線写真は、保存目的で作成された既存のアーカイブのものとなります。数千点の中から選別、発見、そして選んだX線写真に光を当てる行程を経て、命を吹き込みました。これらを改めて撮影するには、暗室で、一枚一枚ライトボックスの上に置くことになります。放射された光は長時間露光によりカラーフィルムへと転写されます。

立体物を平面で表現することが、写真表現の中核を成します。X線写真を使うことで、被写体の内側と外側を写像することとなるため、この感覚が形成されます。私たちを不確定な空間、奥深さと大きさの領域へと誘うように、二次元写真の神秘的な画像は内と外の二つの世界を包むような結果をもたらします。

私はX線写真を、作品を作成した芸術家や工芸職人の表現として、また何世紀も前の物であれ、作品が作られた当時の社会の痕跡や手がかりとして、そして時代を経ても変わることない本質的なものを過去から現在へ伝えるものとして見ています。過去の文化の美術品が人類史の現在地点について何を教えてくれるのでしょうか?また、考古学や文化的品物が国境を越えて交易されたことにより形成された、我々の時代と過去とのつながりについて何を教えてくれるのでしょうか?X線写真は、美術品の本質的な性質や美術品にしみ込んだ痕跡を読み取るフィルターや手段(認識自体がフィルターと手段であることと同様に)としての役割を持ちます。そして、科学と推察力とともに感覚と芸術による時間の広がりと崩壊の考えを促します。

すべての写真と同様に、これらの作品は断片となります。歴史の影で使われたX線写真は、物質と時間そのもの両方を薄切りにしたようなもので、暗示的意味を助長しています。X線は歴史的に、医師が骨や内臓を診るために使われるように、美術品や工芸品の構造調査に使われてきました。これにより、損失、取替え、作成方法や目に見えない内部的損傷が明らかにされてきました。これらのX線写真を撮影した作品は、したがって、閲覧者が解読する必要がある暗号となっています。見えないものを目に見えるようにし、写真という手法で時間が形を変える性質と我々を取り巻いている今もなお存在する過去を表現しています。

『歴史の影』は、2011年秋、Nazraeli Pressよりモノグラフとして出版され、豪華版deluxe edition が2012年春に出版されました。

(翻訳:山田晃弘)

デヴィッド・メイセル ウェブサイト