電車のない島で育った私には、電車に乗るということは憧れでした。大学進学のために故郷から街へと引っ越して以来、私は電車に乗る度、よく外の景色を眺めています。この写真はその時に撮ったものです。

同じ窓から撮られた写真を、10-15枚デジタル処理で多重露光のように重ねることで1枚の写真を作り出しています。重ねられた写真は、乗車中に見た景色を一枚で表現するとともに、時間と距離を圧縮しているのです。この方法によって私の生活圏、具体的には京都、大阪、神戸近辺の景色の表層を浮き彫りにしようと試みています。
こうして見える景色は「地域の様相(The Face of Place)」だと考えています。そして、この写真たちは憧れていた景色のカタログでもあるのです。


増田貴俊 ウェブサイト