杉本剛

*現在ニューヨーク57丁目の Robert Anderson Galleryで2人展を開催中ですね。おめでとうございます。レセプションは9月15日ということですが、今までのところの反響はいかがですか。エディションとサイズ、値段も教えていただけますでしょうか。

@今のところ 余り反響は ありません。このギャラリーも新しくオープンしたばかりなので。2人展なので1人展よりかは多くの方々が招待されていると思いますが、 8月のニューヨークのギャラリーシーンはかなりおとなしく7月の5日からあいているのですがやはり9月に期待しています。幸運にもニューヨーカーという週刊誌が批評を載せてくれたのでどうなることかと思っています。サイズは11x11インチ($1000)と20x20インチ($2000)で、エデションはそれぞれ10、プラス2アーテストプルーフです。

*57丁目といえばニューヨークではもっとも権威のあるギャラリーや老舗ギャラリーが集まっている場所ですね。どんないきさつで展覧会がひらかれることになったのでしょうか。

@Robert Anderson Galleryは今年からの新しい画廊で 夏の展覧会に‘’Works on Paper’’ というタイトルの展覧会をするという事で僕の作品を知っている知人の紹介で参加する事になりました。立地が良いので新しい画廊でも偶然にも結構入ってくるみたいなのでその点は幸いです。

 *今回の作品をつくるきっかけやプロセスについてすこしおはなしいただけますか。

@今回の展覧会に出展している作品は2005年から2007年に制作したPaper_Workという作品です。自分にとって始めてのまとまった作品であるWalk in the Nightの制作をしている時に写真というのは僕にとっては撮るものではなく‘’つくる’‘ものなのだという事を作品を通じて学びました。その際に夜中、町中を歩き回って撮っていた制作方法から何か自分の身近にある誰にでも手に入るマテリアルから何か制作出来ないかと思い、常にメモ、自分のアイデアなどを書きなぐっていた使われてはすぐに消えていってしまう大量生産されたコピー用紙を使って制作してみようと思いました。

* フォトエスパーニャのレビューに行かれて成果をあげられたということもお伺いしましたが、具体的に杉本さんは作品のプレゼンテーション(売り込み)についてはいままでどのようにされていたのでしょうか。

@スペインのマドリットで毎年行われているフォトエスパーニャのポートフォリオレビューに参加したのは2006年の事でした。当時は参加費が無料で(今はどうか分かりませんが)飛行機代もかなり安くスペイン人のアーティストのアシスタントをしていた時何度か行った事があり友達がいるなどの理由で参加する事を決めました。当時反響はよくポートフォリオレビューで2番に選ばれたり、いろいろな画廊など紹介してもらったり、忙しい5日間だったと思います。その後あまり具体的なことは起こりませんでしが、友達など出来て面白かったです。その後ヨコハマフォトフェステバルのオープンポートフォリオレビュー(2010)に参加したぐらいで他のポートフォリオレビュー、フォトフェスには参加していませんが出来るだけこれかは積極的に参加して行きたいと思っています。自己の作品のプレゼンテーションに関しては自分に興味を持ってくれた人などに作品をみて頂く機会(スタジオビジット、ウェブのリンクを送る)を作ったり,その場でどういう事をしているかを説明する様に心がけています。

*影響を受けた写真家はいますか。また、杉本さんがめざされている地点とはどんなところなのですか。

@影響を受けた作家はたくさんいますが、なかでも杉本博司さん、杉浦邦恵さん、Vik munitz 、Philip-Lorca dicorcia. 幸運にも仕事などを通じてお会いする機会などを頂き作品はもちろんのこと、その際に自分なりに感じた前者の方々の作家としての人間性、迫力にはとても刺激を受けました。あとは僕は言葉から影響を受ける事が多いかな。目指しているところは作品を作り続ける事が出来る事かな。

*昨年の10月に僕がニューヨークに行ったときにはお忙しい中イーストビレッジのサケバーで一杯やりましたね。イーストビレッジはとても活気にあふれたエリアになってました。杉本さんのニューヨークでの毎日はどんなかんじなんでしょうか。

@僕のニューヨークの生活はそうですね、イーストビレッジで友達と一杯する事も生活の一部です。(笑)ここ2年間はフリーランサーなので普段は仕事を探す事とその仕事で多忙にしています。ただし10時から6時、週5日というフルタイムの仕事のパターンではなくなったので作品を作る時間は幸いにもやはり増えています。仕事と自己の作品制作のバランスを作るのは僕の中では非常に重要で常に課題の一つとなっています。

*日本ではなく、ニューヨークで写真家として活動することというのは杉本さんにとってどんな意味があるのでしょうか。(プラスの面、マイナスの面などありましたらあげてみてください。)

@十代でニューヨークに来て、12年くらいニューヨークにいます。作品を制作し始めたのもニューヨークに来てからでした。永田さんとも始めてお会いした2010年のヨコハマフォトフェステバルに参加する際に帰国し、日本で活動なさっている他の作家の方々にもたくさんお会いして刺激になりました。日本でも作家として活動して行きたいと思っていますが、日本では本格的に制作した事はなくどのように自分でやって行くのかは分かりません。ニューヨークで現在活動しているという理由は,ここが一番自分にとって制作しやすいからだと思います。ニューヨークにいて作家として活動することは とても大変な事だと思いますがとてもやりがいのある事だとも思います。一生懸命やるには本当に適している街だと思います。

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杉本剛ウェブサイト

2011年8~9月初め(メールインタビューによる)