2012年 香港国際写真フェスティバルレポート
2012年開催された香港国際撮影節(Hong Kong International Photo Festival)は2年に一度行われる大規模なフォトフェスティバルだ。会期は10月9日から11月14日までで、その間に写真展(森山大道・韓国と日本・香港の写真家・ワールドプレスフォトなど)、ワークショップ、セミナー、スペシャルイベント、ポートフォリオレビューなどが行われた。
2012年のメインイベントは森山大道写真展で「Sunflowers」と「Auto-portraits」の二つの展示が行われた。フォトフェスの様子を主催者の一人であるレオン・カータイさんにうかがった。
レオン・カータイ:香港の若い人達は森山大道にとても関心を持っています。森山さんには8月中旬に来ていただきました。というのも彼は展覧会のオープニングにはこれなかったからです。
香港の新聞や雑誌はこぞって彼にインタビューをしました。森山さんは70歳をこえているというのになんと24時間もの間インタビューが続いたのです。
同時に我々は森山さんのセミナーも開催しました。定員は29名でしたが15分で予約は埋まってしまいました。ウェイテングリストには100名以上の人が名を連ねるという状態だったんですよ。すごい反響だったんです。
森山さんは彼の写真哲学を語り、討論があり質疑応答がありました。バーのハッピーアワーに引っかけた企画で「Happy Hour with 森山大道」と題してフリンジクラブのバーで森山さんのサイン会をしたりといろいろ盛りだくさんの催しがあったのです。
展覧会のキュレーションは本尾久子さんが手がけました。彼女は荒木経帷の北京で開かれた展覧会のキュレーションも手がけています。
展覧会はArtisTree(Taikoo Place)という場所で開かれました。1900平方メートルもの広さのある場所です。デザイナーは町口覚さんでした。
二つの森山さんのシリーズが展示されました。ひとつは「サンフラワー」で、もうひとつは「セルフポートレート」です。「サンフラワー」のほうは巨大なプリントで展示されました。2x3メートルもの大きさです。
一方「セルフポートレート」シリーズは小さな写真で構成されました。77センチくらいの大きさでした。そして照明もスポットライトで演出しましたので、コントラストがきわだってとてもすばらしい展覧会になったのです。3週間にわたって開かれた展覧会で1日に1000人以上の入場者がありました。
森山さんは香港には初めていらっしゃったのですね。3日間の滞在になりました。
湾仔の香港アートセンター(Pao’s Galleries, Arts Centre)で開かれたのは日本と韓国の写真家の展覧会です。2階のフロアに日本の写真家、1階のフロアに韓国の写真家の展示をしました。この展覧会は二つの国のコントラストがとてもおもしろかったのです。韓国の写真家はとてもエネルギッシュでした。日本の写真家はとても静かで写真の背景をとても考えているようでした。日本の写真家は全員女性です。私は特に蔵真墨がよかったですね。ストリートフォトです。
日本の写真は笠原美智子さんのキュレーションでした。
日本人写真家で有名なのはやはり森山大道・荒木経帷・杉本博史でしょう。
香港フォトフェスは2年に一度開かれます。
香港の人達は入場料を払って展覧会を見に行くという習慣がありません。香港フォトフェスは政府などの援助は少ないのですが、今回のメインスポンサーはフジとキャノンで、その他に香港ジョッキークラブがスポンサーになっています。展示場所はすべて無料で提供されています。不思議なことなんですが、香港政府はデザインをよく援助するんですが、写真やアートへの援助には感心がないようです。
西クーロンの再開発エリアでのパフォーミングアーツや音楽への投資は香港政府もやっているんですけどね。
ポートフォリオレビューも1日開催しました。笠原さんもレビュアーとして参加しました。他にも香港のキュレーターやギャラリストがレビュアーとして参加しました。
10名のレビュアーに対して18人の参加者でした。参加した写真家のポートフォリオのクオリティは悪くなかったですね。
資料写真はクリックすると拡大されます。
フェスティバルカタログ。キーコンセプトはFrom Like to Love. Live in Photography。
森山大道写真展。
日本と韓国。パラレルビジョンズ。
ポストストレイトとして香港のコンテンポラリーフォトをとりあげている。
ワークショップなどの案内。
カタログは2部に分かれていて、箱に同時に収録されている。デザインも凝っているのだ。
香港コンテンポラリーフォト
韓国と日本パラレルビジョンズ
Blues Wong
Cheung Yick Pan Stephen
Wilson Yeung Chun Wai/So Wing Hon
Tam Hing Kai
Ho Chin Shiu Ramond
Kenneth Ng
Liu Wai Tong
Enoch Cheung
Rogerger Ng
Luke Ching
Lee Sun Min
Kim In Sook
Lee Yoon Ha
Yi Hyuk Jun
Lee Gap Chul
Kim Ok Sun
Park Seung Hoon
Park Seung Hoon
田口和奈
笹岡啓子
蔵真墨
菊地智子
大塚千野
パラレルビジョンズのカタログは中に別紙のページがしつらえてある。
Eye to Eyeという企画。さまざまな職業の素人に写真の撮り方を教えて自分の身近な日常を撮影してもらう、という企画。写真集にしてしまうところがすごい。フライトアテンダント、金融業、お手伝いさん、風俗関係、職人、豆腐屋、お坊さん、看護師、エンジニア、主婦、劇場関係、リハビリトレーナー、無職、無職の難民、企業役職、シェフ、ジャーナリスト、退職者、中学生、移民などほんとうにさまざまな職業の人達にプロの写真家がそれぞれ個別に写真撮影の指導をしてから撮影を始めている。
26 歳。男。学生。
66歳。女。クリーニング業。
31歳。男。クレイアートのトレーニング中。
17歳。女。インターナショナルスクール12年生。
年齢不詳。女。NGOマネージャー。
年齢不詳。女。建築測量。
35歳。女。貨物検品業。
写真撮影の仕方を教えるワークショップ風景。
カタログを入れるため?のバッグもつくられている。