ERI.Yのヨーロッパ写真見聞録#3

ジャン・フランソワ・ロジエ

各画像はクリックすると拡大してみることができます。

Bonjour!フランスに滞在中のERI.Yです。

こちらはすっかり春爛漫!と書きたいところなのですが、4月は天気が悪く、冬のような寒さでした。
そんな暗く長い冬を乗り越えるためか、フランスにはパリを中心にたくさんのスペクタクルがあります。
映画をはじめ、オペラ、バレエ、サーカス、コンサート、舞台、数え上げたらきりがありません。
中でも私の好きなスペクタクルの一つが騎馬オペラです。

ヴェルサイユで騎馬スペクタクル

騎馬オペラとは、息のぴったり合った馬と人間が生演奏の音楽と華やかな舞台装置のなかで魅せるオペラ仕立てのスペクタクルです。
そのスペクタクルを繰り広げる騎馬集団の名は「ジンガロ」。
指揮を執るのはバルタバスというスーパー馬術師。
彼の手にかかった馬は寝転んだり変わったリズムでステップを踏んだり、あっと驚くような体勢を取ったりします。
今からちょうど3年前、日本に二度目の来日をしたときに初めてその存在を知りました。
そのときの演目は『BATTUTAバトゥータ』というタイトルで、ルーマニアの音楽の生演奏にのって人生の喜怒哀楽を魅せてくれました。

ヴェルサイユの庭園へ散歩に出かけた2月、馬術学校のチラシがあちこちに置かれているのに気がつきました。
フランスに行く前にジンガロを私に教えてくれた美容師の方が、ヴェルサイユにバルタバスが作った馬術学校があるらしい、という話をしてくれたのを思い出しました。
チラシを見ると、学校はヴェルサイユ宮殿の真向かいにある大厩舎にあるようです。
大厩舎というのはかつてルイ14世の常用車ならぬ常用馬が待機していた場所です。
バルタバスはその大厩舎を、馬術学校として再利用することに成功しました。
朝は調教の様子を公開、夜はバルタバスが演出したスペクタクルが見られるということだったので、私は早速チケットを取って見に行くことにしました。
朝は練習という感じで、馬が正面を向いたまま斜めに進んだり、6人ほどのポニーテール女性が馬に乗って並列で歩いたり走ったりしていました。
統制の取れた動きに驚くと同時に、走りながら糞を落としていく馬の自由奔放な振る舞いに、つい頬を緩めてしまう私。
朝の練習はお昼頃に終わり、夜の公演まで時間があったためヴェルサイユ市内を散策することにしました。

ハイパーヴェルサイユとの出会い、そしてスペクタクル!

大厩舎の裏を歩いていると、ヴェルサイユ市の掲示板に「HYPER
VERSAILLESハイパーヴェルサイユ」という文字と共に奥まで無限に続くヴェルサイユ宮殿のポスターが貼ってあるのを発見しました。
これは絵画???それとも写真???と近づいてよく見てみると、どうやらそれは写真で、ヴェルサイユにあるランビネ美術館というところで写真展をやっているということがわかりました。
ポスターのイメージからただならぬものを感じた私は、この写真展を見るために明日またヴェルサイユに来ようと思いました。
大厩舎に戻ると、会場の雰囲気は昼間と異なり観客席は家族連れやカップルや観光客でいっぱいに。
いよいよ公演が始まり、馬に乗った四人の女性が静かに進み、ゆっくりと弓道をする体勢に入りました。
バルタバスは好んで日本の文化を演目に取り入れます。
自国の文化がこのような形で取り入れられるのを見て私はとても嬉しくなりました。
会場は真っ暗、ぼんやりとした明かりが的を照らし出し、太鼓と鈴が一定のリズムで鳴る中、馬に乗った二人の女性が同時に的に向かって弓を引きます。
その後、騎士さながらの戦いの場面や、朝練習に出ていた自由奔放な馬が歩いたり走ったり、スキップをしたりといろいろ魅せてくれます。
暗い会場に灯されたオレンジ色の光の中を、きれいに列をなした馬が、バッハの曲に合わせて、静かに、ゆっくりと円を描くように回る姿にうっとり。
まるで夢でも見ているような、そしてどこか知らない世界に足を踏み入れたような気分に。
一時間半近い公演はあっという間に終了、最後に大厩舎の中で生活している馬たちを見学しながら、そしてバルタバスワールドの余韻に浸りながら、心底幸せな気持ちで帰途につきました。

ランビネ美術館へ

翌日、再び訪れたヴェルサイユ、今日は脇目もふらずランビネ美術館へ。
ランビネ美術館は1751年に建てられ、当初ルイ15世のプライベートマンションでしたが、19世紀にランビネ家へと相続されました。
その後現在は多くの貴重な美術品を所蔵する美術館となって、さまざまな展示のほかにそれに関連したイベントを子どもや大人を対象に行っています。
そのような訳で、名前は美術館なのですが、外観は高級な一戸建てといった感じです。
門を通り、小さなお庭を進んで玄関を入るとそこは受付です。
学生料金での入場をお願いしようとすると「今日は無料開放日です」と言われました。
なんと!ラッキー!!!思わぬ幸運に来てよかったとうきうきしながらお邪魔することに。
早速サロンに進むと大きなサイズのあの無限に続くヴェルサイユ宮殿の写真が!!!

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作品の前でおばさまたちが5人ほど指を指してあれやこれやと話しています。
なんだろうと近寄ってみると、なんとヴェルサイユ宮殿のテラスに歴史的に著名な人物が小さく、ずらりと並んでいるではないですか!!!
おばさまたちが話していたのは、その著名人のそれぞれが誰かということだったのです。
高校で世界史を専攻していた私は、教科書で見ていたあの人物!ああ、それでこれは誰だっけ?と作品の近くに寄ってみては頭の中で問答を繰り広げ、おばさま方と同じ状態に。
作品のサイズはどれも壁一面覆われてしまうくらいの大きさで、細工があちこちにあるので、見所が満載です。
作品に共通するのは、主にヴェルサイユに関わる建物であるということ(一部の作品は他の都市のものもありましたが)、その建物が無限に繰り返されているということ、そして帽子をかぶった男性が必ず写っていることです。
また、建物の外観を多重化している作品の背景に壮大な空があり、シュールレアリズムの絵画のような印象もあります。
私が思わず笑い出してしまったのは、歴史的に著名な音楽家とともに、現存するミュージシャンが画面内に共存している作品です。

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ヴェートーベンだ!バッハだ!モーツァルトだ!でもその後ろにエルトン・ジョンがいる!!!
こうなると先ほどのおばさまたちと同じで、あ、ここにレディーガガが、マドンナもマイケルジャクソンもいるー!!!と口に出して言いたくなってきます。
残念ながら一人でいたため、口に出すことは憚られましたが、鼻息を荒くして興奮しながら作品を楽しんでいる自分に気がつきました。
周辺にいるおばさまおじさまたちも、もう黙ってはいられないという感じで、写真を前に話に花を咲かせています。
会場内には、ヴェルサイユ市庁舎の階段の撮影とそれを作品にするまでの短いドキュメンタリーが流れていました。

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どうやって作品にするのか、どんな写真家さんなのかと私の興味はどんどん沸いてきます。
そしてなんと、昨日見たばかりのバルタバスの馬術学校となっている大厩舎も作品になっているではありませんか!!!

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しかもタイトルがバルタバス!
ぞくぞくするような感覚を覚えながら作品を前に嬉しさでいっぱいになりました。
すべての作品を見終わって、作品からの多大なる衝撃を感じながら玄関に戻ると、図録やポスターなどの販売に目が行きました。
後学のために買っておこうかな、とカルトブルーを取り出すと、「申し訳ないのですが、只今カルトブルーのご利用はできません」と言われてしまいました。
「じゃあお金下ろしてきます、銀行どこにありますか」
銀行に向かいながら、買うかどうしようか迷いましたが、こういうものは買っておかないと後からでは難しいということを経験的に知っている私は買うことに決めて銀行から美術館へ戻りました。
戻るとマダムは「わざわざ戻ってきて下さって、どうもありがとうございます。」といって図録と一緒にチラシをくれました。
読んでみると、作者であるジャン=フランソワ・ロジエと交流、と書いてあります。おそらくこれはトークショーであろうと直感した私は、詳細を読み、無料であることと予約が必要であることを知ると、1ヶ月先であるにも関わらずいそいで電話して予約を取りました。

ジャン=フランソワ・ロジエさんのトークショーへ

それから1ヶ月が経った、4月初め。
住む場所も変わり、季節も変わり、しかしあの作品と作者であるロジエさんへの好奇心は変わらず、というよりむしろ増した状態でやや興奮気味にランビネ美術館へ向かいました。
もちろん、前回購入していた図録にサインをもらうために、図録とサインペン、カメラも忘れずに持ってきました。
スキップしそうになるくらいるんるんの足取りで美術館に到着、お庭にはトークショーに参加する人たちがたくさん待機しています。
トークショー開始まで20分ありましたが、私は迷うことなく会場に直行すると、「開場は10分前からです、それまでお待ちください、あ、ご予約のお名前は?」と聞かれました。
参加者リストの一番下にそれらしき名前があり、よく見てみると電話で伝えた自分の名字が妙に長たらしく、へんてこりんに記録されていました。
「あれ?でもおそらくこれだと思います。」「了解!じゃまたあとでー!」
無事に照合を終え、ほっとした私は、開場を待ちながら再び作品を見直すことに。
やはり今日もおばさまたちが群れをなして作品の前で話に花を咲かせて楽しんでいます。
これほどまでに、人々が語りたい衝動に駆られる写真作品もないような気がしました。
いよいよトークショーの会場が開場、席数は80席くらいでしょうか、あっという間に満席になり、立ち見の人もでてきました。
観客のほとんどがフランス人の中高年のおじさまおばさまで、持参しているカメラはどれも上級機種。
見渡した限り、アジア系は私一人。
スライドで作品を見ながらの講演は1時間ほど続きました。

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おおまかな内容は、この写真展が開催されるいきさつ、ルネ・マグリットをはじめとしたシュールレアリズムとの関係、現在開かれている写真展とこれからの予定などでした。
ヴェルサイユに住んでいたことのあるロジエさんに、ヴェルサイユ市の写真作品を作ってもらえませんかと提案したのは、ヴェルサイユ市の市長でした。
これはきっかけのはなしなのですが、それだけではありません。
なぜなら、市長の許可があってはじめてロジエさんはヴェルサイユ市に実在する建築物を利用して作品を作ることができるからです。
フォトグラファーにとってはおなじみの肖像権です。
肖像権はたとえばヴェルサイユ宮殿のような有名な建築物に関しても発生します。
ロジエさんがどんなに作品にしたいと願っても、撮影の許可がもらえなければ作品にすることはできません。
トークショーでわかったのは、ロジエさんが働きかけたのではなく、招かれ、お願いされて、これらのヴェルサイユの作品が生まれたということです。
ニューヨークやパリ、アブダビなどさまざまな都市で作品を作っていらっしゃるロジエさんですが、日本の建築物を使った作品はまだありません。
日本の都市のさまざまな建築物で作品を作っていただけたら素晴らしいのに!!!
また、本がモチーフになっている作品もあるのですが、ロジエさんは本がとても好きだということがわかりました。

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講演の最後に、質疑応答の時間がありました。
こちらの人は積極的に手を挙げて思い思いの質問を投げかけます。
その様子から、みなさん作品を通してロジエさんの世界を楽しんでいると同時に、どのようにこれらの作品ができるのかいうことに非常に高い関心と興味を持っていることが伝わってきました。
「作品のイメージは最初から決まっていて作るのですか?」
「いいえ、撮ってみて、それを組み合わせながら決めて行きます」
「私も作ってみたいのですが、学べるような講座はやっていませんか?」
「いいえ、残念ながらやっていません。」
「一つの作品を作るのにどれくらいの時間がかかりますか?」
「6000枚ほどの写真を撮り、作っていくので、作品にもよりますが、少なくとも三週間以上はかかります。」
私は、どれくらいの時間がかかるかということと、肖像権について質問をしたかったのですが、他の人たちの質問を聞きながらどういう風に質問しようかと思案しているうちにトークショーはお開きになってしまいました。
さあ、ここからサイン会でもはじまるかしらと思ったら、半数以上があっさり会場を後にしました。
しかしロジエさんの周りには個別に話をしたいおじさまたちが数人集まっていて、微妙に列もできています。
あそこにまぎれたい、ときょろきょろしていると、近くに私と同じ思惑で図録を抱えている男性を発見!
よし、あの男性に便乗しよう、と図録とサインペンを用意して、同胞に近づいて行きました。
男性は、あ、君もサインほしいの?と目で合図してきて、お互いにニヤリ。
二人してロジエさんの近くへ出陣しました。
列が少しずつ進み、いよいよ男性の番に。
男性はサイン用のペンを持っていなかったので、私が貸してあげました。
男性も質問があったようでしばらく話していましたが、待つ間、私はどきどき。
とうとう私の番になって、サインをお願いしました。
名前を伝えるのに、名字はまたへんてこりんなことになると思い、頭文字だけにしてもらいました。

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「ERI.Yへ ハイパーワールドでよい旅を! ジャン=フランソワ・ロジエ」

サインしながら、どこの国の方ですか、と聞かれたので、日本人です、と答えました。
逆にどこだと思いましたか?と聞くと、いやあ、韓国か中国か、と思ったのですが、正直全くわかりませんでした、とやはり会場内唯一のアジア人はかなり目立っていたようで、講演中から私の国籍がどこかロジエさんも気になったようです。
サインが終わり、やったー!!!といいながら続けて、質問もいいですか?建物の他に、例えば有名な人物の画像を使ったりしていますが、これについては許可を取って使用しているのですか?と尋ねました。
「画像については通常、60年以上経つと肖像権がなくなることになっています。許可が必要なものはもちろん許可を取って使用しています。写真作品を制作する上でとても大事なことだからこのことは忘れてはいけませんよ。」
なるほど!よくわかりました、とすっきりした私は、厚かましくも最後に写真を一緒に撮って下さいとお願いしてセルフ撮りでぱちり。

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美術館の方に「大変満足しました!ありがとうございました!」と伝え、今度は本当にスキップしながら会場を後にしました。

ロジエさんを日本に紹介したい!

私はロジエさんの大ファンであると同時に、日本にロジエさんを紹介して、招待できる方にお願いして日本の建築物を使って作品を制作してもらえたらいいのに、と強く思っています。
そのきっかけに、このフラクションマガジンは有効なのでは、と考えた私は、出会いから交流までをレポートすると同時にロジエさんの作品を日本に紹介して、ロジエさんが日本に招待される一助になればいいと思いつき、ロジエさんに記事にすることと画像を使うことのお許しを頂けないかとメッセージを送ってお願いしてみました。
すると、もちろんいいですよ、写真を送りましょうか?と快諾の返事を頂きました。
写真については、ロジエさんのウェブサイトの中から選んで下さいとのことだったので、サイトにアクセスしてみました。

http://www.rauzier-hyperphoto.com/

ポートフォリオを見て驚いたのは、フルスクリーンでどこまでも拡大できることです。
棚に並んでいる本のタイトルがわかるくらいの細かさで作品をみることができます。
写真展で見たときには気がつくことのできなかったものをここではたくさん発見することができます。
作品がハイパーであるのは、窓の外にある世界にまったく別の世界が広がっているような、奥行きの深いところから来ているというのがよくわかります。
ポートフォリオをみていると、川端康成の小説からインスパイアされた作品を発見!

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日本について聞いてみたいと思った私は、選んだ作品の名前とともに質問も送ってみたところ、作品とともに回答も頂きました。

Q&A!

Q1.作品を制作するうえで大事なことは何ですか?

A.撮影地に行ったときに、その場所を徹底的に可能なかぎりのあらゆる角度で、外部や内部といった部品となるものすべてを写真に撮ります。
私はそれを最大限で近くも遠くもまるごと全部再現したいのです。
前も後ろも細部もすべて、何も省くことなく、です。
それからその場所についての資料を集めます。
その場所の現在だけでなく、過去と未来についても見ます。
要するに、私が写真において好きなのは、現実をとらえるそのものすごい力なのです。
写真にとらえられたその中で、私はできだけ遠くに行きたいし、境界を押し拡げたいのです。

Q2.ロジエさんは広告写真家でもありますが、その経験が作品制作に与えたものは何ですか?

A.私が広告写真家だったのは2000年までです。
それから11年は、すべての時間を自分のアート作品のためだけにしか割いていません。
広告をやることで、私は必要な技術を得ることができました。
これらの作品を作るうえでの楽しみというのは、技術を完璧にマスターしつつも、私はそれを無視してもよく、また、簡単に自分のしたいことをなんでもすることができるという事実に起因しています。

Q3.ロジエさんはフォトショップで作品を制作しているとのことですが、フォトショップは改良され続けています。欲しい機能は何かありますか?

A.少し前から、フォトショップの新しいヴァージョンには、一般大衆向けに難点を簡略化するためのツールができていますが、それらでできることというのは基本のツール(スタンプ、投げ輪、トーンカーブ、ペンツール、筆)でできることと全く同じことです。
しかし私は新しいものが欲しい。
例えばレイヤーを変形するための機能です。これは自由変形のなかにありますが、作用する頂点は4つしかありません。
しかし以前はペイントブラシで4つ以上頂点のある多角形を変形することができました。

Q4.トークショーで、あなたは本と音楽が好きだということがわかりました。
  ―好きな作家は?

A.私は想像の世界を旅するのが好きですし、夢を見るのも好きです。私は写真家ですが、イメージによって旅をしているのです。
しかし、小説というのは人々を変えてしまう最も力強いツールだと私は思います。
作家、それから音楽家、そして最後に造形芸術家の順番で、精神的な問題(つまり、現実界と想像界の混乱の中にいるということです)を抱えているたくさんの人々がいるということに、私はびっくりしました。

  ―好きな音楽は?

A.全部です!一番始めに来たのは、日本人です:-)武満徹です。私は彼の非常に豊かな音色が好きです。オリヴィア・メシアンも好きですが、フィリップ・グラスも好きで、仕事をするためにたくさん聞いています。
繰り返しの多い音楽は、反復写真とも呼べる私の作品に本当によく合うのです。それでグスタフ・マーラー、ベルリオーズ、もちろんバッハ(反復音楽の最初の音楽家であるバッハ、彼は音楽のすべてです!)。
ジャズでは、ファロア・サンデール、ジョン・コルトレーン、スンラ、アーシー・シェップ、ガト・バルビエリなど。私をトリップさせる音楽で歌手はキャット・パワー、アラン・バシュングなど。

Q5.川端康成にインスパイアされたシリーズを見つけたのですが、どのように作られたのか教えていただけますか?

A.はい。この“眠れる美女”のシリーズは川端にインスパイアされています。
実際には眠りから始めました。後ろの舞台装置は彼女たちの夢です。
それから、モデルを撮影しながらすぐに写真家とそのモデルとの関係を、イグチと眠れる美女との間にあった関係と関連づけました。

Q6.日本についての印象は?

A.残念ながら、日本は私がまだ行ったことのない珍しい国々のなかの一つです。私は招待されるのを待っています:-)今は、どこかに旅行に行くのを控えています。
手腕を発揮するために、私は招かれ、ガイドされる必要があるのです。
しかし、日本については文学と映画で知っています。
その作者は巨匠のなかにはいっています。黒沢明は大変なものです!!
黒沢清の映画も大好きです。
私が思うに、彼は、伝統的な目印を失った日本の現代社会の少し落ち込んだ状態をよく映しています。
日本は私たちにとって、芸術において参考になる国です。
日本は美学主義の国ですが、私がたくさん実践しているバロックの反対にあたります。
もちろん、私にとって大きなインスピレーションの源である漫画や宮崎(駿)についても話さなければなりません!
私は、フクシマの大惨事を乗り越えているこの人々の勇気と公徳心にも心を打たれています。

Q7.日本の読者にメッセージをいただけますか?

A.フクシマの大惨事のあとどれほど世界全体が心のなかであなたがたとともにいるかをあなた方は知らないかもしれない。

ロジエさん、ご協力ありがとうございました!

おわりに

バルタバスをきっかけにロジエさんに出会ったわけですが、両者ともに日本文化に造詣が深いようです。
そうそう、夜の公演の後に見学しながら帰った馬小屋で発見したのですが、馬一頭一頭に名前がついていました!
その中に「kimono」と書いてある馬小屋が!
他にも日本風の名前の馬を探しましたが、私が見つけたのはキモノさんだけ。
ピカソとかマティスとかシャガールもいたけど、キモノというのもかわいいな、と日本文化が愛されている一例を見た気がして嬉しくなったのでした。
バルタバスとロジエさんに共通するのは、壮大な世界観の提示です。
ロジエさんの写真をパソコンでどこまでも拡大して泳ぐような感覚でその世界を旅しているような気分になれるのは本当に楽しいです。
ちなみに作品に必ず登場する黒い帽子をかぶった黒ずくめの男の人はロジエさんだそうです。
皆さんもロジエさんと一緒にパイパーな世界を楽しんでみて下さい!
このレポートが彼が日本に招待される一助になることを祈りつつ終わりたいと思います。